自殺3万人越す、に思うこと

新聞に自殺者が3万人を超えたと言う記事が載りました。もう10年連続でこのような報告があっています。自殺率の多い年代は50代以上の中高年が多く、理由の中に「介護、看護疲れ」というのがありました。これについては、私の周辺でも深刻な事件や状況があります。今、長期の患者が病院を追われ、よほどの理由がないと長期に病院にいることができなくなりました。「在宅医療の勧め」で在宅で死ねることの幸せが強調され、在宅医療があちこちで始められようとしています。これは、老人ホーム化した病院を、本来必要とされる患者のため取り戻そうとする意図もあるかと思います。
確かに、在宅で死ねることは理想ではあります。しかし、4月考えさせられる事件が近くで起きました。新聞沙汰になってますからご存知の人もあるかと思いますが、夫が倒れ介護が必要になってから、同居していた息子の嫁が家を出て行きました。介護は高齢の妻が当然のようにしていたわけですが、その上に息子と孫の世話がのしかかってきたわけです。
一人で奮闘する妻に対しての配慮はなく、夫はデーサービスなど施設を利用することを拒否続けました。「家事、介護、子どもの世話は、女の仕事」と何の疑いもなくやらせ続けた結果、妻は夫を刺し殺してしまったのです。夫の介護、息子の世話、孫の面倒、全てを彼女が必死にやりこなそうとした結果でした。多分、ゆっくり寝る時間などなかったに違いありません。夫を刺した後、自分も死のうとしましたが、一命をとりとめました。ほんとにやりきれない事件ですが、最近ではあまり珍しくもなくなりました。火事で老夫婦が犠牲になったなども、老老介護だったというのが多いようです。
先日、横浜で開催された「生と死を考える」全国大会でも、在宅医療のすばらしさが、医者の立場から報告されていましたが、昼夜それを介護する多くの女性たちについては、残念ながら何の視点もありませんでした。「男は仕事、女は家庭」という固定観念に縛られている、
古い地域では、これから悲劇は多くなっていくことと思います。また、逆のケース、夫が妻を介護する立場になった時も、近所近辺に迷惑を掛けまいとして、悲劇になっています。
北欧のように、社会的な介護システムが整わないまま、在宅医療のよさだけ強調されてもいかがなものかと思います。男女役割分担から脱皮して、出来るものが手を出してゆく意識改革が早急に必要でなのでは、と思うこのごろです。