受章、心からおめでとう!

 次兄が秋の叙勲で、瑞宝双光章を受章したことを、今月初めて知った。受賞や受章に全く関係ないところで生きている者にとって、「へえー、それ何」と訊いてしまった。3年前と2年前心臓手術をした次兄に、たまに健康状態を確かめに、電話する。雑用を言い訳にこのごろすっかりご無沙汰していた。「実は、秋に上京して、皇居春秋の間で天皇に拝謁してきた。言えば、大げさになるから、夫婦でそっと行って帰ってきた。」とのことだった。「気持ちは分かるけど、東京にいる子どもくらいには、連絡すればよかったのに。」と私。
 次兄は12歳から、母にとっては相談相手、私にとっては父親代わり。学校の成績はトップクラス、将来は医者になるのが夢だった。しかし、長崎の原爆で、父親と長兄が犠牲になり次兄の置かれている状況は一変した。進学を諦め、家計を支えるために警察官になった。警察は、昇進試験があり学歴がなくても、ある程度自分次第であることが決めてだったようだ。警察を辞めるときは、警視だった。
私が、連れ合いの勤務につきあって、タイの大使館で出合った警察のエリートは、30歳半ばですでに警視だったことを思うと、学歴のない次兄は、相当の時間がかかった。彼は、きっと諦めたことが多かったことだろう。進学、就職、結婚相手など、ことごとく。それは愚妹(私)を支えるためでもあった。あまりに小さい時から、過酷な状況を見てきた次兄は、人間に対してあまり期待していない。ので、私の平和活動に対しても、「無駄なことはよせ。体験しないものは、理解できないのだから」と否定的。それも理解できるし、やっと平穏な生活を送っている次兄に、残り少ない人生を楽しんで欲しいと思う。ちなみに、天皇は次兄と同年齢、どういう気持ちで拝謁したのだろう。でも素直に喜んでいるようでほっとする。私も、次兄も受章など、人様にひけらかすような性格ではないけれど、今度だけは、苦労した次兄を、褒めてくださったことに、ほんとに感謝したく、報告します。