トム・クルーズ主演の「ワルキューレ」

 先週末、トム・クルーズ主演の「ワルキューレ」を見ました。ドイツのナチス政権時代には、ヒトラーの暗殺計画が40回以上も企てられたそうですが、その中でも既存の作戦を利用した一番大胆な暗殺計画を実行したシュタウフェンベルグ大佐の物語です。主演のトム・クルーズが、積極的に制作に関わった作品だそうです。結末が分かっているのに、動悸がしてしまいました。
 1999年にポーランドアウシュビッツに行ってきましたが、人間が同じ人間をあれほどまで虐げられるのかと、息を呑む思いをしました。収容所の近くにはすぐ民家があって、収容所内で行われている野蛮な行為は、当然一般人にも知られていたはずだと思いました。
しかし、それに異議を申し立てることは、自殺行為につながるので誰もが見て見ぬふりをして、嵐が去るのを待っていたのだと感じました。
ヨーロッパ全土にあった強制収容所などで、犠牲になったユダヤ人は500万人を超えるそうです。そんな不名誉なリーダーを持ったドイツは、あれから半世紀以上経っても、他のヨーロッパ諸国から嫌われているようです。先の日記に登場したデンマークの友人もドイツ人が大嫌いです。戦争に関係ない若い人にも、彼は厳しい批判を向けるので、私は「それはおかしい、そんな恨みがまた戦争を産む」と言ったことがありました。しかし、そんな感情は彼だけではないようです。
 ドイツはそんな負の遺産を払拭するべくあらゆる努力をし、かって敵対したフランスと力を合わせ、戦争のないヨーロッパを実現するためにEUを実現させました。世の中が巨悪に覆われてしまえば、それに反旗を翻すこと至難の業ですし、残念なことに善意が巨悪に勝つことはできないということを、この映画は改めて感じさせます。ドイツ人と日本人は、性格的によく似ているところがあるようです。それは真面目さです。そのこと自体は悪いことではありませんが、余裕のない真面目さは、周囲を不幸にするように思います。先の戦争についてヨーロッパでのドイツへの批判は、アジアでの日本へのそれと重なって、心が重くなります。
 ドイツでは、それでもナチスを倒そうという行動を起こした善意の軍人がいたことは、きっと人々の気持ちを和らげることでしょう。
 日本では、あの戦争中、そのような話は聞いたことがありません。それほどリーダーに従順で真面目に尽くすということでしょうか。
デンマークの友人にぜひこの映画を見るよう勧めたいと思います