[召されて妻は天国へ 別れてひとり旅立ちぬ かたみに残るロザリオの 鎖の白きわが涙 なぐさめ はげまし長崎の ああ長崎の鐘がなる」これはサトウハチロー作詞、古関裕而作曲の「長崎の鐘」の2番だ。

永井隆博士の奥様、みどりさんがモデルと言われる。昭和20年8月9日、自宅で原爆の直撃を受けた奥様は、ロザリオだけが残っていたという。博士自身も被爆されたが、かろうじて生き残り、焼け跡に「如己堂ー己の如く人を愛せよー如己愛人」を建て、愛児誠一(まこと)さんと茅乃さんとの生活を始める。しかし、博士自身は原爆病で床につき、子どものためにと渾身の力を振り絞って、著作活動をされた。2人の愛児を気にしながら1951年に亡くなられた。

先日、東京カテドラル聖マリア大聖堂で、「永井隆生誕100年記念コンサート」が開かれた。「カヤノのためのエレジー」という曲が披露された。これは博士が亡くなった翌年、その著書「ロザリオの鎖」が、ベルギーでフランス語とオランダ語に訳され、これを読んだマルセル・ビラという詩人が400行の詩を書き、その詩に女性作曲家が、曲をつけたものだという。ソプラノのムルデルさんの澄みきった歌声が聖堂いっぱいに広がり、聴く者の胸を打った。
廃墟の長崎から出された永井博士のメッセージが60余年後、ベルギーで芸術となって、里帰りするとは、ご本人も思っていらっしゃらなかっただろう。ほんとにすばらしい!!