歌舞伎座さよなら公演

 来年歌舞伎座が建て替えられることになって、今、「歌舞伎座さよなら公演」が行われています。1月2日には、「古式顔寄せ手打ち式」に招待され、松竹関係者、歌舞伎俳優勢揃いの舞台挨拶を堪能しました。私ごときが招待されたかといいますと、身内に関係者がいるからです。彼は父親の反対を押し切ってこの世界に入ったのですが、もちろん役者ではありません。松竹の一社員にすぎません。社内でどういう位置にあるのか、どんな内容の仕事なのか、ほとんど知らないのですが、2日は、双眼鏡を持って行き、舞台の上の彼を端々から探していきました。両端を見てもそれらしき人はいません。なんだいないじゃないと、諦めてど真ん中で口上を述べている役者さんに焦点をあわせると、その後ろにいるのが彼でした。「えっ!あんなところにいる!」とちょっと驚きました。
 というご縁で、最近はよく歌舞伎座に足を運びます。3月は「元禄忠臣蔵」が上演されています。有名な真山青果の作品です。話の筋は、ご存知の通りで、別に取り立てて言うべきところはありませんが、歌舞伎のよさは、舞台装置の華麗さと役者の所作や科白の言い回し、その意味の深さに、魅せられます。と言っても、まだ十分理解ができるところまではいきませんが、最近は興味深く鑑賞するようになりました。
 前の席の若者はぐっすり寝込んでいて、視界が開けたのはラッキーでしたが、ちょっともったいない気もします。あまり人のことは言えませんが、、。
 「南部坂雪の別れ」の場では、雪がシンシンと降る様子を、太鼓の音で現しているのですが、それが役者さんのいかにも雪道を歩きにくそうに歩く演技が加わって、雪が降りしきる場面が、膨らみます。視覚的なものを、音や光で表現できるというのは、本当なのだと実感しました。
 ところで、歌舞伎座は、来年建て替えられるということで、趣のある建物なので残念な気がしますが、今は座席と座席の間が狭く、手荷物さえ十分置けませんし、出入りも遠慮して自由にはできませんので、もう少し余裕がある客席にしてほしいものです。また開場まで待つ広場も狭く雨を避けることも出来ませんから、これも快適で社交の場としての機能も提供できるよう新しい歌舞伎座の設計に期待したいと思います。しかし、みなさん、よかったら一度は、今の建物で歌舞伎を先ずは観賞(将来は鑑賞までいきたいですね?)してみてください。別に宣伝を頼まれたわけではありませんが、歴史を感じさせる建物では、もう見る機会はないのですから。