辻井伸行さんのご両親に乾杯!

 世の中、景気の低迷、インフルエンザの流行と、暗い話ばかりの昨今、久しぶりに明るいニュースが入りました。それは、バン・クライバーン国際ピアノコンクールで全盲のピアニスト辻井伸行さんが優勝したことです。TVの映像から見る彼の演奏は、健常者をも超えるような指さばきで、ほんとに驚きました。「指に目がついているような」という表現をしていた人がいましたが、ほんとにぴったり言い表しているなあと思いました。ご本人のこれまでの努力は並大抵のことではなかったでしょうが、それにもましてご両親のサポートは、大変だったのではなかったでしょうか。愚息を引き合いに出しては恐縮ですが、彼も4歳からバアイオリンから始め、小学校5年生の2学期まで続けました。その間、千葉、タイ国、東京、名古屋と父親の転勤のため動き、結局、その度バアイオリンの先生を探すことと、高い月謝に苦労するはめになり、名古屋で、親の方がやるべきことを放棄してしまいました。
 音痴の母親に音楽家の子どもなんかあり得ないと思ったことと、3人の子どもを平等に育てたいと思ってたことが、大きな理由でした。日本で芸術家を育てるのは、費用の面だけで見てみても大変です。
そして、一番の不安は、ある程度の家族の犠牲を覚悟し、本人が血の出るような研鑽を積んだからといって、ものになるかどうか分からないことです。ここに親の大きな前向きの決断があってこそ、素晴らしい才能が花開くことになります。音楽に限らず、スポーツなども若くしてスターになった人の親御さんには、大したものだと敬服します。
 7日、東京芸術劇場で息子の所属するオーケストラの第68回定期演奏会がありました。
コンサート・マスターの隣で、口をパクパクしながら長時間の演奏をなんとか無難に演奏している息子をみて、「も少し、私に勇気があったら」とも思ったりしました。彼は、絶対音感とやらがついているらしく、あまり楽譜を読まず、口でメロディーを口ずさみながら演奏しているのでしょうか、あんまりかっこはよくはありません。しかし、小学校の5年生から約10年のブランクがあっての復帰なので、よくついて行ってると、親の欲目でみています。音楽好きでおとなしく、中学時代には、集団暴行を受け唇が腫れ上がって帰ってきたこともありました。ピアノやバアイオリンをやる男の子は、「男の子らしさ」がないと、いじめの対象にもなります。そんなさまざまな問題の上に、辻井さんは、全盲というハンディを超えて、素晴らしい成果をあげられました。いや、むしろハンディではなく目が見えないことが、すばらしい才能に繋がったというべきなのでしょうが、、。伸行さんのお父さんのコメント「彼が、生きてきて良かったという思いが今しているでしょうから」というのが、印象的でした。伸行さんご本人には、もちろんですが、ご両親にも「心からおめでとうございます」と申しあげたい。乾杯!!